中野信子氏『キレる!』のご紹介
キレる! 脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」 (小学館新書) [ 中野 信子 ]
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皆さん、キレてますか?
早速ですが、今回は脳科学者の中野信子氏の『キレる!』という本をご紹介させていただこうかと思います。
この本の趣旨は、
- いい"キレる"と悪い"キレる"がある
- 損をしないためにもキレるスキルを身につけましょう
ということなのですが、脳科学者が書いた本だけあってキレている人の脳内がどうなっているのかについてもしっかりと触れられています。
僕自身、この本を手に取ったのも"キレる"と脳の関係に興味があったからです。
そこで今回は筆者の脳科学的な説明の中で、僕が個人的に見どころだと思ったところをピックアップしてご紹介していきたいと思います。
前頭前野と"キレる"の関係
前頭前野の機能低下により、怒りっぽくなる
【前頭前野の機能】
- 思考する
- 行動を抑制する
- コミュニケーションする
- 意思決定する
- 情動の制御をする
- 記憶のコントロールをする
- 意識・注意を集中する
- 注意を分散する
前頭前野にはこのように"ヒトの意思の力"を司る役割があるといいます。しかしながら、この働きが弱くなると脳内の怒りの感情を抑制するブレーキの役割が果たせなくなるのです。
この前頭前野の働きが弱くなる要因としては、飲酒や睡眠不足、体調不良、薬物の使用、そして脳の老化現象が挙げられます("暴走老人"はこうして生まれるのです)。
前頭前野の機能が強すぎても攻撃的になる
一方で、理性的な行動を促す前頭前野の機能が強すぎる場合も、相手を過剰に攻撃する行動に繋がる場合があるといいます。
このようなタイプのキレ方は"正義感"に基づいているためさらに厄介で、このときの相手の脳内ではドーパミンが放出されていることから、理性が働かなくなっています(しかも快感をおぼえている)。一度こうなってしまったら逃げるが勝ち、でしょう。
なぜ攻撃で快感を覚えるのか?それは、"間違った行動をした人を正す"という正義感を持って制裁行動を行っているため、"自分は正しいことをしている"という"承認欲求"が充足するからだと考えられます。
ルールを守らないものを制裁行動によって正そうとすることで快感を得ているのです。
あおり運転と脳内物質
あおり運転については、テストステロンが出やすい条件というものが実験で分かっていて、それは高級車に乗っているときだと言われています。
また、それと同様に高級車だけでなくトラックなどの大きな車両でもテストステロンが出やすいと考えられています。
原因としてあげられるのが、高級車は自分の方が優位だと思いやすい車だからです。より"俺の方が強い"という意識から、テストステロンが増えていくのです。
日常的に自動車を運転される方としては、想像に難くないかもしれません。
また、あおられるだけでなく相手が車から降りてきて怒りをあらわにしている状態では、ドーパミンが放出されている状態のため、話が通じない状態とのことです。
理性の利かない"キレている猿"の状態です。こういう状態の人からは逃げるのが一番大事です。一刻も警察を呼んで解決はプロに任せましょう。
脳は育て直せる
これはキレやすい人へのメッセージです。
回避型や不安型の愛着の人でも、後天的にキレる以外の表現方法を身につけたり、オキシトシンを増やすことができるということです。
では、どのようにすればよいのかというと、以下のことが挙げられていました。
- 安定型の人と交流して、思考や行動をコピーする。
(模倣する神経細胞であるミラーニューロンを活発にする) - 安定型の人の気持ちの表現方法を学ぶ。
- マッサージに代表されるスキンシップの機会を得る。
(オキシトシンが分泌される) - 肌触りのよい服やパジャマ、寝具など、上質なものを選ぶ。
(オキシトシンだけでなく、免疫グロブリンも増加する) - ライブコンサートもオススメ。
(幅広い周波数帯の音が刺激として立毛筋に入ると、オキシトシンの分泌を促す)
『キレる!』を読んでみて
中野信子ファンを自称する僕としては、ガッツリ脳科学一辺倒の内容でもよかったのにナァ、という感想です。
そこまで「中野信子」や「脳科学」というキーワードには興味がなく、むしろ「キレる」というキーワードに惹かれた人(おそらく、身の回りにキレやすい人がいて困っていたり、キレやすい自分に自己嫌悪している人)にとってはちょうどいい内容なのかもしれません。
しかしながら、「キレる」ことと「脳科学」の関係を取り上げているという測面もあり、人間関係において上手に「キレる」ことを指南しているハウツー的な測面もあり、というバランスのよい貴重な本だと思います。
「キレる」ことについて今一度深く考えてみたい方、一冊いかがですか?