発達障害は本当に人生の早い段階で判明した方がいいのか
僕が医師から発達障害の診断を受けたのは30歳を目前に控えた頃でした。
今の今までは、「何でこんなに発達障害が見つかるのが遅かったのだろう…」、「もっと早く発達障害だと判っていれば、もっと違う(良い)人生があったのではないか」など、診断を受けるのが遅すぎるとばかり思っていました。
しかしながら、先日ツイッターでこのようなつぶやきを見つけて少し考えさせられました。
大人になってから発達障害の診断を受けた人は「もっと早く分かっていれば…」と思うかもしれない。
— 石橋尋志@発達障害ADHD (@ihi1484) 2020年9月17日
でも一方で、早期診断された子たちが大人になった時こう言うだろう。
「私は大人になってから診断を受けたかった。早期発見のせいでオレの人生はめちゃくちゃになった」と。
コレ、無いモノねだり。
「確かにネ」って。
僕は自分の収入で生活するようになってから発達障害が判明したので、親がそれを受け入れてくれなかったとしても、”親を捨てる”ことができるけど、仮に子どものころに診断がついて、親が受け入れてくれなかったら、地獄でしょう。
また、普通の学校で吹奏楽に打ち込むことができなかった可能性もあるし、(自称)進学校→(駅弁)大学→就職という人生も歩めていなかったかもしれないですし、定型発達に擬態してそれなりの収入を得ることもできなかったかもしれません。
でもネ、人生の30年弱、正体不明の劣等感だったり、臆病さだったり、恐怖心だったり、そういったものを抱えて生きてきたのはとても辛かったです。
「何でみんなが出来ることが自分だけできないんだろう…」
「新しい環境でこの”テンドなし”(要領が悪いの意?)の自分はやっていけるのだろうか…」
「ダメだ、集中しようとすればするほど、集中できなくなってミスをする…」
こんなことばっかりでした。
あとは、親からも定型発達に擬態させるべく、「人前で理由もなくニコニコ(ニヤニヤ)するのはやめなさい」、「独り言を我慢しなさい」等の指導がありました。
大学時代、たまたま読んだ発達障害の本に自分に当てはまる点が数多くあったので、「自分は発達障害なのではないか」と話をしたこともあったのですが、「またヘンな本を読んで自分に当てはめたんでしょう」と取り合ってもらえないこともありました。
ただ、タイムマシンなんてものはないので、子どもの頃に戻るなんてことはできません。
定型発達に擬態することで得られたものに感謝してこれからを生きていくしかないのかもしれません。
発達障害関連の検査を受けた結果のご報告
早速ではありますが、先月(2020年1月)の中旬に発達障害関連の検査を受けてきました。
発達障害の診断自体は2016年8月におりていたのですが、なかなか検査を受けるきっかけがなく、今回たまたま主治医の気が向いて勧められるがままに受けたという形です。
前置きはここまでにして、結果のほうをご報告したいと思います。
医師から口頭での説明
僕が最初に医師から発達障害の診断を受けたときは中程度のADHD(注意欠陥多動性障害)と軽度のアスペルガー症候群(現在は自閉症スペクトラムといいます)という診断だったのですが、検査の結果、「ADHDの傾向もあるけど、自閉症スペクトラムの傾向の方が強いですね」とのことでした。
(最初に診断がおりた時に検査はしなかったの?とお思いの方がいるかと思われますが、僕は精神科医の香山リカ先生の言うところの"簡単コース"で診断がおりたパターンの一人なのです)
「詳しくは報告書を読んでみてください」とのことでしたので、薬局でクスリを待っている間、報告書を読むことにしました。
報告書より
ウェクスラー式知能検査(WAIS-Ⅲ)
言語性IQと動作性IQの間に統計的な有意差があり、さらに群指数(言語理解・知覚統合・作動記憶・処理速度)の間、および、言語性・動作性の下位検査においてもスコア差が認められたとのことでした。こういった知的能力のアンバランスは発達障害の特徴の1つなのだそうです。
特に、言語性IQ>動作性IQである点が特徴的であったようで、これは僕が日常生活において言語性IQに基づく聴覚情報をベースにして物事を考える機会が多いということを示しているようです。
AQおよびASRS
AQは自閉症スペクトラム障害、ASRSはADHD傾向の有無を調べることを目的とした心理検査です。
AQ・ASRSともに、自閉症スペクトラム障害とADHDの診断基準を満たしているとのことでした。
性格特徴
性格特徴についてはNEO-PI-Rという検査が使われていました。これは健康な成人の性格を測定する心理検査です(僕は健康なのか?)。
N(神経症傾向・うつ) かなり高い
E(外向性) かなり低い
O(開放性・独創性) 平均
A(調和性・協調性) 平均
C(誠実性・自尊心) かなり低い
発達障害の傾向を有している方に認められるプロフィールがみられたとのことでした。
また、得点の最上限・最下限に達している項目もありました。
得点の最上限に達した項目:N1(不安)、N6(傷つきやすさ)、A5(慎み深さ)
得点の最下限に達した項目:E(外向性)/E5(刺激希求性)、C4(達成追及)、C5(自己鍛錬)
不安が高く、内向的な性格とのことです。また、自信がなくて、他人からの評価や周囲の雰囲気に流されやすいです。さらに、周りの人たちを信頼していない一面があるため、対人関係は表面上の付き合いになり易いです。
残念ながら、読者数が減りそうな結果が出てしまいました。
感覚プロファイル
青年・成人感覚プロファイルというものを使用しました。これは、感覚処理の特徴を調べる心理検査です。
低登録:非常に高い
感覚探求:平均
感覚過敏:高い
感覚回避:非常に高い
他の人が気付くことに自分だけ気付かないときがあります(例えば?)。また、感覚に敏感な様子、および、感覚刺激を避ける傾向も認められました。
その他の検査に関して
総合所見・今後に向けて
発達障害の有無について、今回の心理検査では一定の結果が算出された、とのことです(ただし、最終的な判断は医師が行うとも書いてありました)。現在の理系職は適職の1つになりますが、下記の2点に注意するよう書いてありました。
①部門を横断する業務、他部門の作業、管理職など
マルチタスクが苦手であること、および、自分のペースを崩されることなどが理由でストレスが溜まります。加えて、対人コミュニケーションを取らなければいけない機会が増えるため、適性があるとはいえません。
②出張
環境の変化に対して、迅速に対応することは不得手です。
検査の結果が来て
- まあ当たってるかな(85%)
- 抽象的だからもっと具体的に書いてちょうだい(10%)
- なにそれ、心外なんだけど(5%)
という感想です。
ちょっと意外だったのが、ADHDと自閉症スペクトラム(アスペルガー)を比べたときに、(当初の医師の診察もあり、)自分はADHDの方が優勢なのかなって思っていたのですが、自閉症スペクトラムの方が優勢というのが少し意外でした。
客観的に自分のことをハッキリさせるためにも、検査は受けられるモンなら受けてみるものですね。
僕って、「『発達障害』と言いたがる人」なの?
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今回のエントリは、香山リカ先生の『「発達障害」と言いたがる人たち』という本について、書いていきたいと思うのですが、このタイトルに思うところが少なからずあり、最初この本を書店で見かけたとき、思わず手に取ってしまいました。
この本を読んでいく中で抱いた感想や、気になったことについて書いてみようかと思います。
皆様、どうか、最後までお付き合いくださいませ。
ひょっとしたら僕は「『発達障害』と言いたがる人」?
僕は精神科で一応「発達障害(ADHDとアスペルガー)」という診断をもらっている身ではあるのですが、この本のタイトルを見た瞬間、「自分は、この『発達障害』と言いたがる人たち」に当てはまるのだろうかと考えてしまいました。
というのも、自分が発達障害の診断を受けることになったのは、家族や友人、職場などといった“自分以外”の人間からの指摘や勧めがあったわけではなく、自分自身で「発達障害なのではないか」との疑いを持ち、精神科を受診したからなんです。精神科を受診した際に、自分の中で「人生がうまくいかないのは、自分の意思や努力が原因なのではなく、発達障害のせいなんだ」という”甘え”がなかったかと言われると、完全に否定することは出来ず、その“甘え”を持っていることが「『発達障害』と言いたがる人」たる条件なのではないか、とこの本を読む前から考えていたんです。
香山先生の考える「『発達障害』と言いたがる人たち」
香山先生の考える、「『発達障害』と言いたがる人たち」には次の2種類のタイプがあるようです。
- 「自分のやる気や性格のせいではなく、障害のせい」と思いたがっている人
- 「何らかの個性的な同一性がほしい」人
1.のタイプの人は、「発達障害の可能性は低い」と言われると、失望したり、怒り出す人もいるといいます。僕もどちらかというと自分のことをこのタイプに近いのではないかと考えていて、「発達上の問題は認められない」と医者に言われたら、はっきりとした失望や怒りは感じなくても、少なくともうれしいとは思わなかったと思います。
2.のタイプは、(僕は共感できないのですが)”平凡な人”や”どこにでもいる人間”であることが耐えられない、あるいは「自分には特別な個性や能力がある」という空想を捨てきれない人であるといいます。このタイプの人たちは障害年金をもらおうなどといった世俗的な利益を欲しているわけではないのです。
発達障害の診断に至るまで
この本で初めて知ったことなのですが、発達障害の診断に至るまでには、どうやら「丁寧コース」と「簡単コース」があるようなのです。
それぞれのコースの内容についてはこの本を読んでいただくとして、僕の場合は、「簡単コース」だったように思います。初診の時に、医師は子供のころと現在の困りごとなどを訪ねた上で、(おそらく)経験と知識、そしてカンを働かせ、「あなたは中程度のADHDと軽度のアスペルガーでしょう」と診断をつけていました。医師から出身大学のことを訊かれた際に、理系の学部である旨を話したら、「あなたみたいな人って、理系が多いんですよね」と言われたことをよく覚えています。これも診断を下すうえで重要な情報だったのかもしれません。
「丁寧コース」のように母子手帳や小学校の頃の通信簿は求められませんでしたし、親の同伴もなく、検査も受けていなかったので、当時はこんなに簡単に診断がついていいのかな?という思いは少なからずありました。香山先生によると、「簡単コース」には種々の問題があるとのことではありますが、その病院は精神科の中では比較的発達障害に対して、力を入れている病院のようですので、今ではその医師の診断を今では信じることにしています。
ここまで本の内容や感想というよりも、自分の話ばっかりになってしまいました。すみません。
この本の特徴としては、現役の精神科医が書いているだけあって、発達障害に関する勉強になりますし、それだけでなく香山先生の個人的な意見や考えにも触れることができる内容ですので、発達障害関連本をそれなりに読んできたという人にも新たな視点を与えてくれるような内容となっています。
今回のエントリはここまでになります。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは、またお会いしましょう。
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