保守雑誌感想文【2020年1月】
自律自助(特集より)
「自律」とは自分で自分を律すること。他に振り回されず、自分をコントロールし、自分のリズムを創っていくことです。
一方の「自助」とは自分で自分を助けること。「自分の力で自分の向上発展を遂げること」と辞書にあります。
即ち「自律自助」とは依存心を捨て、すべてを自分の責任として対処していくことだと言えます。人や環境のせいにせず、自分の最善を尽くすことだとも言えます。
「天は自ら助くる者を助く」という格言があります。自律自助の精神がある人にのみ、天はその力を与えてくれる、ということなのでしょう。
明治初期、福澤諭吉『学問のすゝめ』と共にベストセラーとなったサミュエル・スマイルズ『自助論』の冒頭の言葉をかみしめておきたいと思います。
自助の精神は人間が真の成長を遂げるための礎である。自助の精神が多くの人々の生活に根付くなら、それは活力にあふれた強い国家を築く原動力となるだろう
自律自助の社風はかく創られた
西精工社長の西泰宏氏のインタビュー記事より。
社員の働きがいや幸せを実現する経営を徹底して追究して、2017年に「ホワイト企業大賞」を受賞するなど、全国から注目を浴びている徳島県の西精工ですが、かつては社員に自社やその製品に対する愛着がなく、社員同士でちゃんと挨拶や掃除もしないといった、現在とは正反対の社風だったといいます。
そこから、西泰宏社長は
- 挨拶運動、5S運動
- 自社製品についての勉強会
- 人事評価や給与体系の見直し
などの改革を経て現在の会社を作り上げていきました。
社員一人一人に自律自助を根付かせるための経営者の一生懸命さが、(一部なのかもしれませんが)伝わってくるインタビュー記事でした。経営者向きの記事という印象です(この記事を読んで反省を促されない経営者はどうかしていると思います)。
西 当社がずっとぶれずに 力を入れてきたのは、目先の利益に繋がるようなことではなく、社員教育の徹底や社員を心から幸せに働ける職場づくりといった「土壌づくり」なんですね。土壌がしっかりしていれば、それが自ずと製品の品質やお客様の評価に繋がっていくはずだと考えてきたんです。
―西さんは、まさに社員が自ら考え、自ら動く「自律自助」の社風を実現されたと言えますね。
西 (略)自律自助の究極は、やっぱり一人ひとりが「自分は何のために生まれてきたのか」「誰のために生き、働くのか」という問い、使命感を持って日々の仕事や人生に向き合い、人の役に立つ幸せを実感することだと思うんですね。
スマイルズ『自助論』の訓え
花王前会長 新国立劇場理事長、尾崎元規氏と明治大学文学部教授、齋藤孝氏の対談記事より。
スマイルズ『自助論』の内容から離れるかもしれませんが、尾崎氏の発言が気になったので取り上げます。
尾崎 今回の「自律自助」というテーマは、私が最近考えていることと共通する部分があるんです。日本をはじめとする先進諸国は成熟社会に入り、ダイバーシティ化といわれるように、人々の価値観もすごく多様化してきています。
何故この発言が気になったのかというと、裏を返すとこれまでは価値観が多様化していなかったわけで、1つの価値観に従っていればよく個人は「自助自立」の必要なんてそんなになかったんです。
そして今日(こんにち)、尾崎氏の言うとおり、人々の価値観が多様化しているので、"一人の偉大なリーダー(カリスマ)"なんてまず出て来ないわけで、個人は「自助自立」を求められるようになるんです。厳しい時代になったものです。
他の方の保守雑誌感想文の紹介
これまでの保守雑誌感想文
マンガでわかるサミュエル・スマイルズの自助論 [ くろにゃこ。 ]
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