ホウ砂に吹かれて

コンサータ72mg男が書きたいことを書きたいときに書くブログ

2017年第67回関西吹奏楽コンクールカスタムCDレビュー

 

今回のエントリはまたまた某所で2017年の関西吹奏楽コンクール(全日本吹奏楽コンクール、すなわち全国大会の予選)のCDをゲットしたので、そのレビューを書きたいと思います。

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ただ、このCDはおそらくカスタムCDで、一般向けに売られているものとは違い、購入者が自分で収録する団体を選んで業者に作ってもらうタイプのものかと思われます。

収録団体としては、

ということで、金賞ながら惜しくも全国大会を逃した3校+往年の名門校、天理校という現地で演奏を聴けなかった人にとっては、非常に興味深い音源となっております(全国大会へ駒を進めた演奏を聴きたければ全国大会のCDを買えばいい訳ですからネ)。

早速ではありますが、レビューをしていきたいと思います。

 

 

4.奈良県代表 天理高等学校(指揮・𠮷田秀高)

課題曲:Ⅰ スケルツァンド(江原大介)
自由曲:《アルメニアン・ダンス》~パートⅠ(A.リード)

課題曲は音の処理が結構なキーポイントとなる曲だと僕は思っているのですが、割と僕好みの音の処理でした。ただ、冒頭など、木管楽器の細かい連符といった動きがもっと前に出てくると、この曲の仕掛けがクリアに見えてきたのではないかと思います。また、細かい音のタンギングで、ハーモニーをもっと感じたかったナァ、なんていうのは贅沢な希望でしょうか…。あ、アルトサクソフォンのソロは非常によい音色でしたネ!

自由曲は往年の名曲というか、超有名曲ですネ。こういった曲は一般聴衆も(おそらく)審査員も身構えて聴くことでしょうから、そういう意味では非常に大変なプレッシャーを感じながら取り組まれたことと思います。表現として奇抜さ・突飛さに頼らず、それでいて退屈させない演奏です。特に、木管群主体の部分の美しさは特筆に値します。ここまで来るのにさまざまな工夫があってのことでしょう。終盤の盛り上がり、音楽的な頂点のもって行き方は魅せ方がとても上手でした。—銀賞

9.兵庫県代表 滝川第二高等学校(指揮・西谷尚生)

課題曲:Ⅳ マーチ「春風の通り道」(西山知宏)
自由曲:白磁の月の輝宮夜(樽屋雅徳)

課題曲は至るところに表現の工夫が認められ、ありとあらゆる声部が活かされた演奏だったように思います。また、マーチ(行進曲)としての安定感もありました。トリオをはじめとして木管群の音色感が優れていて、豊かなサウンドに花を添えていたように感じました。

自由曲では、テュッティのサウンドの迫力、難解なパッセージの明瞭さ、バンドの持ち味としてのサウンドの美しさ、個々の奏者のレベルの高さ、などなど、どれをとっても超高校級でした。
しかしながら、選曲には一考の余地があるようなないような…。せっかくレベルの高いバンドなのですから…そのレベルの高さを表現する材料も…ちゃんと選曲されていることとは思いますが…奏者は高校生なのですから…もっとなんかこう…オーケストラの非常に優れたトランスクリプションとか編曲作品とか、吹奏楽の往年の名曲や海外の完成度の高い新曲とかほかにあるじゃないですか…いや、この曲が駄作だって言ってるんじゃないんですよ…う~ん…ここまでにしておきます。—金賞

11.大阪府代表 近畿大学附属高等学校(指揮・小谷康夫)

課題曲:Ⅰ スケルツァンド(江原大介)
自由曲:交響曲《ワインダーク・シー》(マッキー)

課題曲はどちらかというと、ずっしりとした堂々たる表現、という印象を持ちました。音の響きがなくならないようにとのことかと思いますが、比較的長い音価を用いている印象ですが、もう少しシャープな音価を用いた方が、個人的には好みです。また、時折、レガートっぽい(?)吹き方が気になりましたが、こういった吹き方は、短い音価の吹き方との対比で活きてくるものではないのでしょうか。さらに欲を言うと、伴奏の管楽器のハーモニーと打楽器の音色のブレンド感やバランスがもっと良くなると、テンポの速い部分がよりカッコよく聴けると思います。いろいろ書きましたが、全体的には非常に優れた演奏です。

自由曲は近年大流行の曲ながら、完成度の高い曲だと思います。エキセントリックな(日本語に訳しきれなかった)曲ながらも非常によく整理されて演奏されていたように感じました。今までこの曲を聴いてきて、「なんかよくわかんないなぁ」なんて思っていたところもこの演奏ではクリアになっていたように感じます。例えば、細かいパッセージがきちんと丁寧に演奏されていたりとか、難解なリズムがちゃんとはまっていたりとか。中間部の木管群のソロやテュッティは非常に表現豊かでブラボーです。また、終盤は理性的ながらも高揚感が表現されていて、このバランスが絶妙でした。—金賞

16.大阪府代表 東海大学付属仰星高等学校(指揮・藤本佳宏)

課題曲:Ⅱ マーチ・シャイニング・ロード(木内涼)
自由曲:ドラゴンの年 2017年版(スパーク)

課題曲は冒頭から推進力、安定感を感じる演奏です。バンドの特徴である鳴りのよい明るいサウンドも余すところなく発揮されていました。曲の仕掛けや表現への工夫が認められる表現豊かなマーチでした。

自由曲では華やかなサウンドを持つ金管群が大活躍です。
1・3楽章では細かい動きはちゃんと正確に聴こえてきましたが、それに対する打楽器群をはじめとする合いの手パートのアンサンブル、テンポ感が今ひとつの箇所が散見されました。もっと言うと、合いの手が突っ込んでたり、逆に遅れて聴こえる箇所がありました(僕だけでしょうか)。
一方、2楽章では、木管群のソロやテュッティの表現が美しく、特に音楽的な頂点の設定が適切だったように思います。
こちらも往年の名曲かつ難曲をしっかり仕上げてきて、頭が下がる思いで聴かせていただきました。—金賞

 

 

 

レビューは以上となりますが、これだけ高いレベルの演奏をしても全国大会へ推薦されないということは、いかに大阪桐蔭明浄学院淀川工科の壁が厚いか、ということですよね…
(ちなみに、この3団体の顔触れは2014年から2018年まで5年連続で全く変わっていません)

2019年こそはこの壁を破れるように頑張っていただきたいものです。
応援しております。

それでは、また次回もよろしくお願いします!

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