吹奏楽コンクール東北大会2018職場・一般の部CDレビュー
以前、吹奏楽コンクール東北大会CDを聴いた感想をこちらのブログに上げたことがあったのですが、そのときは職場・一般の部のCDは購入していなかったものですから、中学・高等学校・大学の部の感想だけでした。
しかしながら、今回は某所で職場・一般の部のCDも入手できたものですから、この場を借りてレビューを書かせていただきたいと思います。
どうか、最後までお付き合いくださいませませ!
(CDの注文のない団体は収録されないとのことで、出場した12団体中、7団体の演奏の感想になります。なんかさみしいものがありますネ。また、演奏の感想を書いた順番はCDの再生順ではなく、大会の出演順になります)
5.青森県代表 八戸ウインドアンサンブル(指揮・佐藤憲一)
課題曲:Ⅲ 吹奏楽のための「ワルツ」(高昌帥)
自由曲:バレエ音楽《サバの女王ベルキス》~ソロモンの夢、狂宴の踊り(レスピーギ/小長谷宗一編)
課題曲のワルツは、冒頭のクラリネットの旋律、スラーではありますが、より明瞭に聴かせたいところでした。全体としては、楽しげな曲想がよく伝わってくる演奏だったように思います。演奏の解釈としては、アゴーギグの付け方、各楽器群のバランスのとり方などとても個性的、という印象でした。
自由曲のベルキスは、演奏上の構成や演出から作品への敬意が覗えます。構成や演出がうまくいっていただけに、各場面においてのユニゾンやソロなどで、ちょっとした技術的なほころびが気になってしまい、もったいなく思いました。個々の力量が求められます。—銅賞
バレエ音楽「シバの女王ベルキス」より I.ソロモンの夢 II.戦いの踊り IV.狂宴の踊り 新品価格 |
6.山形県代表 寒河江吹奏楽団(指揮・大宮裕一)
課題曲:Ⅳ コンサート・マーチ「虹色の未来へ」(郷間幹男)
自由曲:「吹奏楽のための協奏曲」より Ⅰ,Ⅳ,Ⅴ(高昌帥)
課題曲のマーチは全体としてのサウンドは好きなのですし、マーチとしても成立していた演奏のように思いますが、各セクション、場面ごとの音型のバリエーションが少し乏しいように感じます。特に直線的な音が求められる場面、物足りなさを感じました。録音のせいでしょうか。
自由曲、冒頭をはじめとした演奏の迫力はさすがです。しかしながら、演奏全体のダイナミクスが強奏に偏っているわけでもなく、弱奏部のサウンドもしっかりと作り上げられていたように思います。欲を言えば、ダイナミクス強弱以外の表現をもっと前面に出していただきたかったな、と思います。—銀賞
8.山形県代表 酒田吹奏楽団(指揮・武田晃)
課題曲:Ⅲ 吹奏楽のための「ワルツ」(高昌帥)
自由曲:ヴィジルス・キープ(ジルー)
各声部のバランス、細部の音のずれなど、改善点を指摘すればキリはないのですが、すんなりと聴くことができたワルツだったように思います。僕自身あまり音楽の素養がないのでよくわからないのですが、ワルツの「型」がしっかりとしていたからなのかもしれません。指揮者の力量によるところも大きいのでしょう。
一方、自由曲では端正かつ伸びやかなサウンドが聴けました。ただ、作品のよさは伝わってくるのですが、演出というか音楽表現について、少々幼稚な書き方になってしまいますが”大げさ”な感じを出してもよいのではないでしょうか。どこか、”おとなしすぎる”という印象に終始してしまいました。—銀賞
9.宮城県代表 泉シンフォニックウィンドオーケストラ(指揮・荒井富雄)
課題曲:Ⅳ コンサート・マーチ「虹色の未来へ」(郷間幹男)
自由曲:「吹奏楽のための協奏曲」(高昌帥)
課題曲冒頭のファンファーレ、個人的にはもう少し明るい音を希望したいところですが、これがこのバンドの個性なのでしょう。サウンド的には余裕を感じ、他のバンドとは一線を画す印象です。指摘しても仕方ないことかもしれませんが、短い音符や連符で楽器間の連携にほころびが見え隠れすることがありますので、注意したいところです。
自由曲冒頭は力技ではなくスマートに決まっており、どこか余力さえ感じました。難しい(であろう)アンサンブルも見事に仕上げていました。会場の響き方もありますが、全体のサウンドが混濁してしまうところ、それに伴って今一つ旋律が浮かび上がらないところがわずかながら認められたのが課題でしょうか。—金賞・代表
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10.福島県代表 吹奏楽団「凛」(指揮・佐藤悟)
課題曲:Ⅳ コンサート・マーチ「虹色の未来へ」(郷間幹男)
自由曲:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582(J.S.バッハ/佐藤悟編)
課題曲のマーチは、クラリネット群のメロディーの吹き方、時折見せるホルンの力強さ、トリオの中音群(主にユーフォニアム)がよく聴こえてくる作り方など、個人的には非常に好みの課題曲Ⅳでした。ただ、低音群の全体をリードする気概(?)をもっと感じたかったところです。
自由曲のバッハは、品のある演奏です。音楽の素養のない僕でも、バッハらしさを感じることができたのは、きちんとバッハの型?様式?が守られているからなのでしょう。重厚感がもっと欲しいところで、そのためには、充実した音色、十分な音圧、(個々人同士で揃えた上での)息のスピード感が求められます。—銀賞
パッサカリア(原曲: パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582) [小田桐寛之 編] 新品価格 |
11.秋田県代表 大曲吹奏楽団(指揮・小塚類)
課題曲:Ⅳ コンサート・マーチ「虹色の未来へ」(郷間幹男)
自由曲:交響的舞曲~Ⅲ(ラフマニノフ/佐藤正人編)
課題曲冒頭のファンファーレはTrp.1がしっかりとリードしていました。作り方としては王道のマーチで、突飛な表現に頼らずとも充実した音楽的な内容となっていました。惜しむらくは、終盤で低音群が少々失速したことくらいしょうか。
自由曲はしっかりとした技術的なバックグラウンドが、表現を支えているという印象です。特にテンポの速い部分でも勢いに頼らずに地に足をついた演奏をしている点が好印象です。強奏時もサウンドが破綻することがなく、お見事としか言いようがありません。—金賞・代表
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12.青森県代表 弘前市吹奏楽団(指揮・山内一泰)
課題曲:Ⅲ 吹奏楽のための「ワルツ」(高昌帥)
自由曲:ルイ・ブージョワの賛歌による変奏曲(C.T.スミス)
課題曲のワルツですが、音楽の流れが自然に感じられるところもありましたが、全体的により積極的な表現を聴きたかったように思います。それが音楽の推進力に繋がりますので…。
自由曲はこのバンドの持ち味である美しいサウンドが存分に発揮されていました。全体的な仕上がりとしては、(細かい技術的な課題もありますが)整然とした印象です。その一方で、音楽表現としてはあっさりしすぎている箇所も散見されたように思いますので、より積極的に踏み込んだ音楽的演出だったり表現を期待したいと思います。—銅賞
今回のエントリは以上になります。
吹奏楽コンクール厨房の方も、そうでない方も、最後までお付き合いいただきありがとうございました!
それでは、またお会いしましょう!