ホウ砂に吹かれて

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中野信子先生の『不倫』を読んで

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中野信子先生の本を読んでいると、人間って思っている以上に遺伝子や脳内ホルモンに支配されていて、意思や理性でコントロールできる部分ってごく限られているんだナァ、なんて思わされます。

最近僕が読んでいた『不倫』についても同様で、どんなにリスクが付いて回っても、どんな罰を受けることになっても、不倫はなくならないだろう、っていう話なんです。また、昨今のメディアやインターネットを見てもわかるとおり、不倫とほぼ必ずセットになっている”不倫に対する世間からのバッシング”ですが、こちらに関しても、なくなることはないようです。

 

 

「不倫」以外の話題で興味深かった点

この本の中では、不倫にまつわる知識として、愛着の形成や脳内ホルモンなどについて触れられております。それに関連して、不倫以外の話題にも触れているところがありましたので、このエントリではその中で興味深かった点について取り上げてみたいと思います。

職場の潤滑油となる「安定型」の愛着

 「その人がチームにいるとなんとなく空気がよくなり、みんなが気持ちよく仕事ができ、その結果、うまくいく」というタイプの人が、世の中にはいます。多くの場合、こうした人は安定型と考えられ、(略)実はこうした人たちが、誰かが失敗したときや不安になっているときにはクッションになり、結果的に組織に重要なリソースを提供しているのかもしれません。

中野先生は、このようにおっしゃっているわけですが、これに似たようなことを、『勝間さん、努力で幸せになれますか』という本の中で、香山リカ先生がおっしゃっていたことを思い出しました。

香山 (略)仕事の成果は出せないけれど、気楽に相談できる感じの人。そういう一見「無駄」な存在の人がいると、困ったときにその人の近くに行っておしゃべりしたりグチをこぼしたりするだけで、ほっとできる。(略)そのように、直接利益には結びつかなくても、 知らないあいだに必要な存在になっている人っているのではないのでしょうか。

さらに、そのような企業では、うつ病になる人が減り、うつ病になった社員の復職率も高いといいます。

しかしながら、勝間和代さんはこのように反論します。

勝間 でも、そういう「遊軍」みたいな人ばかりだと会社は成り立たないですよね。誰が作って、誰が売って、誰が稼ぐのかということになる。会社の中にはそういった「遊び」や「遊軍」が必要だというのはわかりますが、全員がそれでいいとは思いません。 

 この反論をを裏付けるように、中野先生もこのように述べています。

 ところが近年、日本の企業では「実力主義」「自己責任」と盛んに謳われるようになり、 個人としてのパフォーマンス(営業の数字など)が重視されるようになりました。その弊害として、こうした人材を軽視する風潮が生まれています。

 「こうした人材を軽視する」とまではおっしゃっていませんが、勝間さんはこのように続けています。

勝間 (略)情報システムが発達して人事評価がフェアになればなるほど、たぶん遊びの部分は削られていくと思います。 

 さらに「人事評価」について、香山先生が突っ込みます。

香山 そもそも、その人事評価のシステムっていうものが必要なんでしょうか。私は、あらゆる職場でその評価システムが人を不幸にしているとしか思えませんが。 

 こうした人事制度の問題について、中野先生の意見ははっきりしています。

 しかし、個人プレイヤーとして見た場合に優秀なタイプではなくても、安定型の人材をチームに入れておくことは、集団としての力を高めるうえで無視できない要素であるといえます。人事制度でも、そうした人材を正当に評価する仕組みを用意するべきでしょう。 

 

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セロトニンの不足とオキシトシンの過剰 

「不倫叩き」という”サンクション”に関連して、オキシトシンという脳内ホルモンがもたらす内集団バイアスと外集団同質性バイアスについて、中野先生は「ネトウヨ」を例に説明されています。

 内集団バイアスと外集団同質性バイアスは、そこかしこに見られます。たとえばネット右翼ネトウヨ)は安倍晋三総理が大好きです。そして、アメリカのトランプ大統領も支持します。(略)一方、中国や韓国のことは大嫌いです。 

 おそらく彼らの脳内には、善玉(安倍総理トランプ大統領改憲派)vs.悪玉(中国、韓国、北朝鮮護憲派)といったバイアスが定着しているのだと考えられます。安倍総理が選挙演説をヤジられて「こんな人たち」という言い方をしたことがありましたが、これも思わずウチとソトを分ける意識が出てしまったのでしょう。先ほども述べたように、こうした行動はオキシトシンの働きが強い人たちによくみられる行動パターンです。

 ウチとソトを分け、ソトを攻撃してくれる政治家が現れると、リソースの貧しい環境におかれた人ほどコロッと転ぶことが予測されます。(略)

では、なぜこのようにオキシトシンの働きが強くなるのでしょうか?それには、セロトニンの不足も関係しているようです。

 東アジアにこれほどセロトニントランスポーターの密度が低い民族が集中しているということは、注目に値します。また、これがさまざまな政治・外交面での軋轢の遠因になっているのではないかと考えることもできます。

 セロトニンが恒常的に不足している場合、安心感を得るためにオキシトシンを利用する、という現象が起きます。ストレスを解消するために、セロトニンではなくオキシトシンに頼るわけです。

 一方、オキシトシンは内集団バイアス、外集団同質性バイアスを高める働きがあります。これによって、ストレス解消と排外感情の盛り上がりがリンクしている可能性もあるのです。 

普段、ツイッターなどでネトウヨを見かけるたびに、どうして?という疑問がわくのですが、中野先生の説明でどこかすっきりした気分になりました。

 

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感想(0件)

ということで、『不倫』という本について書いたのに、このエントリの内容は「不倫」とは関係のないカンジになってしまいました。すみません。今更ではありますが、この本はちゃんと「不倫」について取り上げております。皆様、買って、読んでご確認くださいませませ。

今回のエントリはここまでにしたいと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

それでは、またお会いしましょう!再見!